今日も聞こえて消え越える

それに従うのが馬鹿らしくて

私の世界は今日も私が中心であるように振舞わなくては

そうでしょう? 何しろ私はキリュウなのですから





いつも通り暗くて淀んだ空気の世界で少し湿ったような音のする
地面を踏みながら、私はいつも通りこの世界を歩いてあげていた。
別に本来このような汚らしい地面など浮遊能力などを使えば歩く必要もないわけですが
何故かその能力は私には異常に負荷が大きい。すごく疲れるんですよね。

非同士焉刃や非同士葉牙、非同士落紫などはよく使っているのですが、
どんなに時間をかけても疲労したような素振りを見せないため、どうやら奈色の能力にも相性というものがあるように思われます。
――全く忌々しい、これではまるで自分が彼らより劣ってるように聞こえるではないですか
私にはその分、幻覚魔法という私にしかない能力があるのです
これさえあれば演出はばっちり表現できますからね


まぁ、実際歩いたほうが飛ぶより私の優雅さを表現できて美しいので
歩くことは嫌いな方ではないのですけどね。真っ黒で汚らしい地面が嫌いなだけ。

私がこの世界を歩いてあげている理由は2つ、

1つは同士白希と会えたら嬉しいから

もう1つは私の美しさを周りに見せてあげなければと思ったからです。

この世界の生き物と呼ぶことすらおぞましい醜い生き物たち
知性がほとんどないので大半の生き物に反応はほとんどありませんが、
私の美しい姿を見れることはさぞ光栄で感情があったら歓喜に打ち震えていることでしょう。

まぁ、その大半は私を見た本能的な嫉妬でしょうかね、襲いかかってくるんですが。
しかし美しく強さも兼ね備えた私の敵ではありません。
召喚した鎖で10箇所ぐらい貫いておけば勝手に息絶えます。
私に殺されてさぞ光栄でしょうね。知能はないですけど。

どうでもいいですが、私はあまり血が好きではないんですよね。意外でした?

だって美しくもないのに目を惹かれてしまうんですよ?
ネチャネチャして赤黒くてどう見ても私の求める美しさなんてないのに。
自分にかかってしまったとき恍惚の感情が湧き上がってしまうんです。
触れていると安心してしまう、そしてさらに求めてしまう。

最悪ですよね。私はこの白く美しい服を汚したくないのに。
非同士の皆も同じなのでしょうね。そうなると、これは奈色の特徴なのでしょう。
ああ、気持ちが悪い。

しかし、美しくないものを壊すのは好きなんですよ。
だって、美しくないんですよ?存在する価値がないじゃないですか。


――ん?

ああ、いつもの声が聞こえてきましたね。

よく知った、 私の美しい声で

聞こえてきます、声に相応しくない品の欠片もない"名前"が。

「黄伐(おうき)」

奈色の黄、本来の名前だと思われますが
そんな美しくない名前など私が認めるわけ無いでしょう。
目覚めてすぐに聞こえてきた言葉ですが、脳内で全力却下しました。
切流は私が自分で付けた名前です。
こう、流れるようにそっと輝く美しさを表現していて素晴らしいと思いません?
そのままでも美しいのに漢字を変えれば"輝留"。素晴らしいでしょう!
この美しい名前がある以上、美しくない名前はいらないんです。
ですから、奈色の彼らも同士も知らなくていいんです。

美しいものは美しいところだけ見せていればいいのです

醜いものなど存在する必要性がどこにあるんでしょう

ああ、分かりません

引き立てとか聞いたこともありますが
美しいものは元から美しいのですから、引き立てすらいらず
そこに存在するだけで惹かれるんです。

同士白希も同士破創も、もちろん私もそういう存在だ
ただそこにいるだけで美しい。
そこに場所は関係ない。

そういう存在は明るい陽の下でも輝くのでしょう。
迷いも恐れも怯えも私にとっては全てが美しい。

それが同士なのですから。

だから私は同士白希を探しながらまた歩きます。
何も変わらない景色を何千、何万分歩くと

ほら、見つけた

すぐに見つけられる美しい光が
私を見てなにかため息をついてますけど、さすが同士白希。その動作も美しいですね。

ですから私と一緒に歩きましょうね。
お互いの美しさを見合おうじゃないですか

ほら、そんな顔をしかめたりせずに、手伝ってあげますから。


あなたの血を浴びて悦ぶ、なんてことしたくないので
今日もあなたを守りましょう