繰り返しの唄





向けられた瞳が、
つむがれた純粋な言葉が、
私が差し出した手をおそるおそる掴むその手が、



辛かった 


悲しかった 


けれど、嬉しかった・・・




どうしようもなくて、ただ何もすることが見つからなくて
けれど、何かしなくちゃいけなくて、でもそれが判らなくて、ただ彷徨ってた

何かに躓き地に伏した自分を周りは冷ややかに見つめ
その後は何も見ていないかのように視線も合わせようともせず過ぎ去っていく

でも、一人だけ、自分の前に立ち、手を差し伸べた
顔を挙げた自分の目に最初に映ったのは傷だらけで包帯だらけの腕
次に見えたのは心配そうに自分を見る表情

告げられた言葉は
「大丈夫?」
という優しい言葉


そのとき、初めて泣いた。


痛かった

辛かった

悲しかった

でも痛いのは擦り剥いた膝じゃなかった

辛かったのは人前で転んだことじゃなかった

悲しかったのは傷だらけの腕に哀れんだからではなかった



痛かったのは自分がどうしようもないほど孤独だと知ったから

辛かったのは傷だらけのその腕をまだ人のために差し伸べられる強さを知ったから

悲しかったのは自分はその腕を差し伸べられるべき人間でないことを判っていたから



私が泣いている間、その腕は優しく私の背中を撫で続けた

私が泣いても仕方ないのに
私は泣くべきではなかったのに

強くなろうと決めた その優しさを守る為に強くなろうと決めた










――私は差し伸べた

やつれた傷だらけの身体で
地面へ伏した彼に

驚いた表情の彼は
おそるおそる私の腕を取った

本来なら当たり前のように過ぎ去っていく人々すらも足を止め
私の手をとる彼と手を差し伸べた私を見つめていた

彼は疲労の濃い顔で
精一杯の笑顔を見せた

私はそれに優しく微笑み返した


痛かった

辛かった

悲しかった

寂しかった


でも、嬉しかった
いつまでも変わらない彼の姿

それが判ったことがたまらなく嬉しかった



――さぁ、物語を再び紡いでいこう




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